子宮用剤

病態
胎児を出産する際十分な栄養を与えるために子宮自身の血液量は普通よりはるかに多くなっている それが胎児を出産後の子宮において急速に収縮胎盤からの血管群からの出血を防ぐ しかしこの流れがうまく機能しないと、血管が収縮せずに胎盤の剥離面(胎児出産後に胎盤も娩出する)から大量の出血を起こすことがあり このように剥離面の血管の十分な収縮がを原因とする大量出血を弛緩性出血という また分娩後に子宮の大きさが4〜6週間で再びもとの大きさに戻るとされているがそれがうまくいかない状態を子宮完全復古不全と呼ぶ 原因は子宮内感染や胎盤が子宮内に残っていることなどが考えられる 結果 分娩後24時間を経てもなお出血が続く 晩期出血に陥る 麦角系アルカロイドは血管収縮作用により その様な胎盤娩出前後における、弛緩出血、子宮復古不全、帝王切開術、流産、人工妊娠中絶などの出血を抑える目的で用いられまたそれらに適応を持つ またプロスタグランジン製剤は子宮収縮作用を持つがその作用から分娩前の陣痛が弱い場合に子宮を収縮させ陣痛を誘発させるそのため妊娠末期における陣痛誘発・促進、分娩促進に適応をもつ 切迫流産や早産においてはその子宮収縮を抑制させることが必要となる 子宮にはβ2受容体が分布しstimulantによって子宮平滑筋は弛緩するそのためこれらの症状には、β2−stimulantが使用される また子宮内腔にしか存在しない子宮内膜がそれ以外の場所にできる症状を呈する子宮内膜症では子宮内膜の発育を抑え閉経状態を作り出す目的でホルモン療法剤が用いられる またホルモンが関連する疾患である子宮筋腫の治療にも用いられる

子宮収縮薬
上述した胎盤娩出後の子宮復古不全、弛緩性出血、などを原因とする出血を抑える目的においては麦角系製剤を主として使用する 
これらの血管を収縮させる製剤の使用時にはその他の血管を収縮させる作用を持つのでSide effectsである血圧上昇、肺動脈圧上昇、冠血管の収縮作用等に十分注意をする
麦角系アルカロイド薬としてエルゴメトリンマレイン酸塩:エルゴメトリンFやメチルエルゴメトリンマレイン酸塩:メテナリン、メテルギンがある
分娩後の子宮弛緩、産褥時の出血に対しては子宮収縮の目的でプロスタグランジン製剤を使用する 
それらのプロスタグランジン製剤の主なものとしてはジノプロスト:プロスタルモン・F、プロスタグランジンF2α、グランディノン、ジノプロストトロメタミン:プロナルゴンF、ジノプロストン:プロスタルモン・EプロスタグランジンE2、ゲメプロスト:プレグランディン、が存在する
これらのPG製剤にはt1/2が非常に短いという特徴を持ちおよそ10min〜15minで薬効は消失する
 

子宮運動抑制薬
上述したように子宮には自律神経系中の交感神経系のβ-2receptorが存在しstimulantによって子宮平滑筋は弛緩する そのため切迫流産や早産には以下のβ-2stimulantであるリトドリン塩酸塩であるウテメリンが用いられるβ2−receptorは心臓にも分布しstimulantによって陽性変時、陽性変力作用を示すのでウテメリンなどのβ2−stimulantを大量に用いる場合には動悸などの心負荷に留意するが必要である 
β-2stimulant以外で切迫流産や早産に用いられる薬剤としてはMgの働きで神経終末のAchの放出を抑制し筋収縮を抑える硫酸マグネシウムブドウ糖配合薬であるマグネゾールやマグセント等がある マグネゾール使用に当たっては高Mg血漿に注意する 
またこれらの薬剤はその弛緩作用から子宮収縮が通常より強く出ている場合の子宮内発達遅延に対しても用いられることがある 


ホルモン療法薬
子宮内膜症においては黄体ホルモンであるエストロゲンの分泌を抑えることまた子宮筋腫においても同様にエストロゲンを抑えることが治療上有用とされているので
エストロゲンを抑える目的でGnRn−Agonistであるリュープリン等を用いる 本来GnRnは視床下部から分泌され脳下垂体に働きゴナドトロピンを放出させエストロゲン活性化へと作用するが、リュープリン等のGnRn−Agonistの投与はnegative feedbackを引き起こしエストロゲンは働きを抑えられる 
Side efffectsとしては エストロゲン低下時に見られる骨量減少、更年期様障害がある 
またダナゾールは男性ホルモン作用を持ち結果低エストロゲン状態を起こすことが治療に繋がる Side effectsとしての嘔気などに留意する 
ホルモン療法で使用される薬剤は以下の通り
ダナゾール:ボンゾール、ジエノゲスト:ディナゲスト、ブセレリン酢酸塩:スプレキュア、スプレキュアMP酢酸ナファレリン:ナサニール、プラステロン硫酸ナトリウム水和物:マイリス等


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