免疫抑制薬


病態


基本的に免疫系の過度な賦活化による疾患を対象とする 
免疫系の過活動によって引き起こされる疾患は多様である 
免疫抑制薬の適応は膠原病である血管炎症症候群、
関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎・皮膚筋炎、ベーチェット病、
や腎疾患であるネフローゼ、その他各種腎炎や
腸疾患である潰瘍性大腸炎、クローン病、肝疾患である慢性活動性肝炎、
血液疾患である自己免疫性溶血性貧血(造血薬の項参照)、
突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、再生不良性貧血など、
皮膚疾患としては乾癬、天疱瘡 神経疾患である重症筋無力症、多発性硬化症、
その他ぶどう膜炎、交感性眼炎、肺線維症、そして臓器移植である。  


膠原病 血管炎症症候群関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎・皮膚筋炎、ベーチェット病
腎疾患 ネフローゼ、その他各種腎炎
腸疾患 潰瘍性大腸炎、クローン病
肝疾患 慢性活動性肝炎
血液疾患 自己免疫性溶血性貧血(造血薬の項参照)、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、再生不良性貧血
皮膚疾患 乾癬、天疱瘡
神経疾患 慢性活動性肝炎
その他 ぶどう膜炎、交感性眼炎、肺線維症
臓器移植


治療薬

 免疫系を抑制するための作用機序による分類は
代謝拮抗薬、アルキル化薬、カルシニューリン阻害薬、生物学的製剤。 
代謝拮抗薬はT細胞の遺伝子レベルでの代謝増殖・分化を抑制し 
免疫能を賦活するサイトカインの抑制を行う。 
カルシニューリン阻害薬はT細胞の抗原抗体反応能を遺伝子レベルで抑制し
細胞機能を落とし、免疫能を賦活するサイトカインの抑制を行う。 
アルキル化薬はDNAをアルキル化して複写の阻害を行い細胞死をもたらす。
 
代表的な薬剤としてプリン代謝拮抗薬である、

アザチオプリン:イムラン、ミゾリビン:ブレディニン、
ミコフェノール酸モフェチル商品名:セルセプト、
そしてピリミジン代謝拮抗薬である
メトトレキサート:メソトレキセート、リウマトレックス、
アルキル化薬としてはシクロホスファミド商品名:エンドキサン 
カルシニューリン阻害薬としては シクロスポリン:サンディミュン、ネオーラル、
タクロリムス:プログラフが代表的な薬剤である 
生物学的製剤としては
ムロモナブ−CD3:オルソクローン OKT3、バツリキシマブ:シムレクト、
リツキシマブ:リツキサンこれらの薬剤は免疫抑制としての働きから
上述した病態での疾患の他に免疫過剰であるリウマチ疾患や、
細胞増殖抑制作用から抗悪性腫瘍薬としても使用される薬剤が含まれる 
これらの薬剤は細胞毒性を有しているので使用には特に注意する必要がある 
またその薬剤の特性からSide effectsにも十分な注意が必要である。 

代謝拮抗薬 プリン代謝薬:アザチオプリン(イムラン)、ミゾリビン(ブレディニン)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)
ピリミジン拮抗薬:レフルノミド(アラバ)
葉酸拮抗薬:メトトレキサート(メソトレキセート、リウマトレクス)
アルキル化薬 シクロホスファミド(エンドキサン)
カルシニューリン阻害薬 シクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)タクロリムス(プログラフ)
生物学的製剤 ムロモナブーCD3(オルソクローンOKT3)バツリキシマブ(シムレクト)リツキシマブ(リツキサン)



代謝拮抗薬


アザチオプリン
azathioprine(AZP)
:イムラン、アザニン 
適応:移植時拒絶反応抑制(腎移植、肝、心、肺移植)、ステロイド依存症、
のクローン病の寛解導入及び寛解維持並びにステロイド依存症の潰瘍性大腸炎の寛解維持

ミゾリビン
mizoribine
:プレディニン 
適応:腎移植時拒絶反応抑制、原発性糸球体疾患によるネフローゼ症候群
(ステロイド難治例のみ、頻回再発型除く)、
ループス腎炎(持続性蛋白尿、ネフローゼ症候群又は腎機能低下が認められ、ステロイド難治例のみ)、
関節リウマチ(過去の治療でNSAIDs、抗リウマチ薬の少なくとも1剤により十分な効果が得られない場合のみ)

ミコフェノール酸モフェチル
mycophenolate mofetil(MMF)
:セルセプト 
適応:腎移植後の難治性拒絶反応、拒絶反応抑制、心、肝、肺、膵移植時拒絶反応抑制

アルキル化薬

シクロホスファミド水和物
endoxan
:エンドキサン、エンドキサンP 
適応:(内服)多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、乳癌、急性白血病、真性多血症、
肺癌、神経腫瘍、骨腫瘍、他の抗ガン剤との併用:慢性リンパ性白血病、
慢性骨髄性白血病、咽頭痛、胃癌、膵癌、肝癌、結腸癌、子宮頸癌、子宮体癌、
卵巣癌、睾丸腫瘍、せん毛性疾患、横紋筋肉種、悪性黒色腫(注射)多発性骨髄腫、
悪性リンパ腫、肺癌、乳癌、急性白血病、真性多血症、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、
神経腫瘍、骨腫瘍、他の抗癌薬と併用:慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、
咽頭痛、胃癌、膵癌、肝癌、結腸癌、睾丸腫瘍、せん毛性疾患、横紋筋肉種、
併用療法、乳癌、(手術可能例における術前、術後化学療法)、造血幹細胞移植の前治療

リンパ球増殖抑制薬

グスペリムス塩酸塩 
gusperimus hydrochloride
スパニジン
適応 腎移植後の拒絶反応


細胞増殖シグナル阻害薬

エベロリムス
 everolimus
サーティカン 
適応 心・腎移植時拒絶反応抑制


カルシニューリン阻害薬


シクロスポリン
ciclosporin(CYA)
:サンディミュン、ネオーラル 
適応:腎・肝・心・肺・膵移植時拒絶反応抑制、骨髄移植時拒絶反応、
および移植片対宿主病抑制、眼症状のあるベーチェット病、
尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬、
再生不良性貧血(重症)、赤芽球ろう、ネフローゼ症候群、
(ネオーラルのみ)全身型重症筋無力症
(胸腺摘出後でステロイド投与で効果不十分、副作用により困難な場合)

タクロリムス水和物(FK506)
tacrolims hydrate
:プログラフ 
適応:(共通)腎・肝・心・肺・膵移植時拒絶反応抑制、
骨髄移植時拒絶反応・移植片対宿主病抑制(顆粒・カプセル0.5mg、1mgのみ)
全身型重症筋無力症(胸腺摘出術後ステロイド治療不可又は副作用により困難な例
(カプセル0.5mg、1mgのみ)
関節リウマチ(既存治療で効果不十分な場合に限る)
ループス腎炎(ステロイドの投与が効果不十分又は副作用で困難な場合)

グラセプター
適応 腎・肝・心・肺・膵・小腸移植における拒絶反応の抑制、
骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主主病の抑制

生物学的製剤

バシリキシマブ
basiliximab
:シムレクト 
適応:腎移植後の急性拒絶反応抑制

その他

ヒドロキシクロロキン硫酸塩 
hydroxychloroquine sulfate
プラケニル 
適応 皮膚エリテマトーデス



副作用

共通するSide effectsとしては免疫抑制作用による感染症の悪化、
がある特に免疫抑制作用を有するステロイドとの併用例では注意する。 
代謝拮抗薬とアルキル化薬は骨髄抑制、脱毛、肝障害、
シクロホスファミドは出血性膀胱炎、性腺機能異常、悪性腫瘍の合併など、
メトトレキサートは血液障害、腎障害、肝障害、間質性肺炎、
ミゾリビンは血液障害がタクロリムスは消化管症状、
腎障害、高血圧、糖尿病、があるそれぞれについて
Side effectsを防ぐ目的でTDMや血液検査を行うのが望ましい。

 

以下各薬剤 医薬品添付文書

イムラン

アザニン

ブレディニン

セルセプト

エンドキサン 錠

エンドキサン 注

スパニジン

サーティカン

サンディミュン カプセル

サンディミュン 内用液10%

サンディミュン 点滴静注用

ネオーラル内用液 カプセル

プログラフカプセル

プログラフ 注射液

プログラフ顆粒

グラセプター カプセル

シムレクト 静注用20 

シムレクト 静注用 10

ベンリスタ 点滴静注用

 
治療薬各論に戻る  医薬品についての話に戻る